教える力とは何か|伝わる人が自然とやっている5つのこと
「あの人の説明、なんでこんなにわかりやすいんだろう」 「自分も同じことを教えているのに、なぜか伝わり方が違う」
教える立場になると、こういう差を感じる瞬間があります。500社以上の企業研修に登壇し、Udemy受講者2万人超と向き合ってきた経験の中で、「教えるのがうまい人」には共通してやっていることがあると気づきました。
特別な才能でも、話し方のテクニックでもありません。意識すれば誰でもできることです。この記事では、伝わる人が自然とやっている5つのことを解説します。
教える力その1|「?」が生まれない段階設計をしている
教えるのがうまい人は、説明の順番と量が丁寧です。
マーケティングの研修を例に挙げると、受講者の中には「マーケティングは難しいから自社には無理」「事例を聞いてもピンとこない」という状態で来る方がいます。知識の問題ではなく、「聞く姿勢」や「自分たちに活かして考える」という発想がまだない状態です。
以前の私は、そのまま研修を進めてしまっていました。でもある時、この根本のスタンスの違いに気づいて、まずそこから丁寧にほぐすことにしました。「難しくない理由」「自社でも使える理由」を最初の段階で腑に落としてから進んだところ、受講者が最後までくらいついて聞いてくれるようになりました。
教えるのが下手な人の説明を聞いていると、話が突然飛ぶことがあります。「え、そこどうやったの?」「その前の部分が知りたかったのに」と感じる場面です。これは教える側の感覚で説明量を決めているから起きます。
教える力がある人は、相手の頭の中に地図を描くように説明します。「今ここにいる人が、次のステップに進むために何が必要か」を起点に、説明の量と順番を決めている。だから聞いている方は「?」が生まれず、スムーズに理解が進みます。
教える力その2|相手ができないことを大前提にしている
教えるのがうまい人は、「相手はできない」を当然の前提として持っています。
これは当たり前のことのように聞こえますが、実際にはできていない人がとても多い。なぜ教えるのか。相手ができないからです。でもこの当たり前を忘れて、「なぜこんなことがわからないのか」という気持ちが出てしまう人がいます。
教える力がある人は、相手がわからないことを責めません。「まだここが見えていないんだな」と現在地として捉えて、そこから次のステップを一緒に考えます。できないことを前提にしているから、相手に合わせた説明ができる。これが伝わる人と伝わらない人の根本的な差です。
教える力その3|寄り添い度が高い
教えるのがうまい人の会話には、こんな言葉がよく出てきます。
「〜ということで不安になっていますよね」 「〜できるようになりたいということですよね」
相手の状態——不安なのか、希望があるのか、迷っているのか——を言葉にして確認しながら進めます。これが寄り添いの正体です。
私自身、受講者からよく「私たちのことをわかってくれている」と言っていただくことがあります。特別なことをしているわけではなく、ただ目の前の人の状況を言葉にして確認しているだけです。でもそれだけで、受講者の表情が変わります。「この人は自分のことをちゃんと見てくれている」と感じてもらえると、話を聞く姿勢がまったく変わります。
寄り添いとは、ただ優しくすることではありません。相手が今どんな気持ちで、何を求めているかを理解しようとする姿勢です。逆に寄り添いがないまま教えようとすると、どれだけ正しいことを言っても耳に入りません。
教える力その4|ビフォーアフターが見えるように設計している
教えるのがうまい人は、受講者が自分の変化を実感できるように設計しています。
「なんとなく勉強になった」で終わる講座と、「あ、自分ここが変わった」と実感できる講座の差は、ビフォーアフターが見えるかどうかです。
私が研修で口を酸っぱくして言っていることがあります。「数字を出してください」ということです。「なんとなく改善した」ではなく、「問い合わせ数が月10件から25件になった」「開封率が15%から32%になった」という形で、変化を数字で見せる。数字は言い訳ができません。自分の変化が客観的に見えるから、受講者の自信につながります。
見た目の変化でも同じです。「最初にこう書いていたものが、こう変わった」という前後の比較があるだけで、受講者は「自分は確かに変わった」と実感できます。
自分がどこにいて、どこに進んだかが分かる。これが次の学習への意欲にもなります。教える力がある人は、内容を伝えるだけでなく、相手の変化を可視化することまで設計しています。
教える力その5|教えることを楽しんでいる
教えるのがうまい人は、楽しそうに教えています。
私がこれを強烈に実感したのは、学生時代の研究発表でした。自分で選んだ研究内容のはずなのに、ウェブで調べただけで自分の意見が何も入っていない。心のない成果物を、ただ発表するだけ。当然、面白くありませんでした。
審査してくれた方に「すごく面白くなかった。みんな同じことしか言わないから眠くなった」と素直に言われました。
そのとき気づいたのは、自分のことしか考えていなかったということです。「早く終わらせたい」「うまくやり過ごしたい」——自分の気持ちだけで発表していて、聞いてくれている人を見ていなかった。それから変わりました。自分だけでなく、全体を見る。聞いてくれる人を見る。その人たちのために何かを届けようとする。そこから、話すことが楽しくなりました。
楽しそうに教えている人から教わりたいか、義務感で教えている人から教わりたいか。答えは明確です。教えることへの熱量は、確実に相手に伝わります。「この人、本当に楽しそうに話しているな」と思われた瞬間、受講者の前のめり度が変わります。
まとめ|教える力の根っこはすべて「相手を見ること」
5つの特徴を並べると、共通しているものが見えてきます。
- 段階が丁寧で「?」が生まれない設計
- 相手ができないことを大前提にしている
- 寄り添い度が高い
- ビフォーアフターが見えるように設計している
- 教えることを楽しんでいる
すべて「相手を見ている」ことから生まれています。
学生時代の私は、発表の場で自分のことしか考えていませんでした。でも聞いてくれる人を見るようになってから、教えることが変わりました。教える力は、知識量でも話し方のうまさでもありません。目の前の人を見て、その人の変化を引き出す力です。
「自分はどの5つが足りていないか」——そこから考え始めると、教え方が変わります。
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