会社員経験は”武器にならない”は思い込み|”当たり前”が指名される専門性に変わる理由
初めてのセミナー前、自分でお金をもらう価値があるとは思えなくて、当日の朝リビングでうずくまって泣いたことがあります。
「会社員時代の経験なんて、誰でもやってることだし」
「資格を取った専門家には敵わない」
「私の経験を教材にするなんて、おこがましい気がする」
会社員経験を活かして講師として独立したい人が、最初にぶつかる壁がこれです。そんな壁にぶつかりつつも、500社超の企業研修・Udemy受講者2万人の現役講師が、”当たり前”が専門知識に変わる理由と、指名される講師になるための経験の見せ方を解説します。
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「誰でもできること」は、あなたが一番できることだから見えていない
会社員として10年働いていると、日々やっていることが「当たり前すぎて」目に入らなくなります。トラブル対応の順番、上司への報告の仕方、取引先との温度感の測り方。これらは意識せずにできるようになった瞬間から、あなたの中で「スキル」ではなく「習慣」に変わります。
これは心理学で「知識の呪い」と呼ばれる現象と表裏一体です。知っている人ほど、それを知らない人の視点を想像できなくなる。だから会社員経験者の多くが「自分の経験には専門性がない」と感じるのは、経験が浅いからではなく、深すぎて自分では測れなくなっているからです。
「当たり前」が専門知識に変わる3つの条件
1つ目は、業界の外に出た瞬間に価値が反転すること。社内では全員ができる報告書の書き方も、異業種の人からすれば体系立てて教われる場がない技術です。
2つ目は、失敗込みで語れること。私自身、独立して最初の頃、企業に営業をかけて3回失敗しています。こちらから会いに行って、最後は「もういいですよ」と帰されました。それならやり方を変えようと、オンラインで発信を始めたらある会社から声がかかりました。うまくいった話だけでなく、こういう失敗の順番までセットで語れると、聞き手は自分ごととして受け取ります。
3つ目は、具体的な場面とセットで語られること。「コミュニケーション力があります」ではなく、いつ・どこで・何をしたかが見えると、初めて他人が使える知識になります。
指名される人は、経験を「実績」ではなく「型」として見せている
講師として指名される人と、そうでない人の違いは、経験の量ではなく、経験を再現可能な形に変換しているかどうかです。
「10年間営業をやっていました」だけでは、聞いた人は何も持ち帰れません。何を、どんな順番で、何を変えてやったのかという「型」にまで落とし込まれていると、聞いた人は自分の状況に当てはめて考え始めます。この「自分にも使えそうだ」という感覚が、指名の理由になります。
私が最初にいただいた講師料は、学生向け企画で1万円でした。それでも圧倒的な熱量で本気でやった結果、その評判が次の依頼につながり、次に来た行政の企画では1回20万円になりました。対象は変わっても、私がやったことは同じです。変わったのは、経験を型として渡せる形にしたことだけです。
私自身、独立前は斜陽産業と言われていた封筒メーカーで10年働いていました。独学でマーケティングを学び、最終的には手紙を送って企業にインパクトを与え、仕事を獲得しました。この経験は当時、社内では特別なことだと思っていませんでした。でも独立後、これを「誰にでもできる方法として型にして語る」ようになってから、初めて「その話が聞きたい」と言われるようになりました。特別な経験だったからではなく、型にして渡せる形にしたから選ばれたのだと思っています。
まず自分の「当たり前」を棚卸しする
やり方は難しくありません。次の3つを、思いつく限り書き出してみてください。
・何も考えずにできてしまうこと
・後輩や新人によく聞かれること
・「なんでそんなことができるの」と言われたこと
これらは全部、あなたにとっては「当たり前」でも、他人にとっては学びたい技術です。書き出したら、その中の一つを、失敗も含めた具体的な場面とセットで語り直してみる。それだけで、専門知識として渡せる形に変わり始めます。
会社員経験に専門性がないのではありません。専門性を、自分で測れなくなっているだけです。